新開からのメールが届いてから一週間、あの夜から三日、福富と新開はまた外泊届を出していた。今週は大学のほうではなく、各自家に帰り家族と進学先や下宿などについての相談をするらしい。
あれから荒北は電池が切れるまでやる方式をやめ、一時間から一時間半を目安としてこまめに休憩を取るようにしていた。過去問などはなるべく本番のとおりにやるために二時間近く続けて解くことも多い。そういったときの息抜きには自室ではなく談話室に出てくる、というのがここ数日の荒北の勉強パターンだった。
丸つけを終えて赤ボールペンを机に置き、ごろりとベッドにからだを投げる。
思い出すのは、ただ、ゆっくりとからめられたごつごつした指先。三日もたてば感覚なんてもうとうに思い出せなくて、それなのに、あの夜から新開との間にあったことばかり考えている。もっと正確には、新開のことを。
わかんねえ、そう言った新開のほうけたような顔。口から出かかって、結局聞けなかった言葉。すべりこんできた指先、すこししっとりとしてすいつくようだった手のひら。でこぴんしたときに胸のうちに感じた妙なあたたかさ。新開のことがすきなのだろうか。そういう、恋愛的な意味で。荒北が頭を悩ませているのは、つまるところ、その一点なのだった。
「オレが新開を、ネェ……」
うーん、と唸って寝返りをうつ。もちろん大切な友人だと思っているし、そのへんのクラスメイトよりもはるかに思い入れはある。それは確かだ。しかしそこに恋愛に準じるなにかがあるかといわれると、途端にわからなくなる。新開とはあれからも何事もなかったように話したり一緒に食事をしたりしている。荒北はそれを残念ともよかったとも思うことなく、ただ当然そうあるべきものとして同様の態度を返しており、それがまた不可解といえば不可解だといえなくもないのかもしれない。
このまま部屋にいてもなににもならないと、荒北はベッドからおりて談話室に向かうことにした。幸運にも集中力が並外れているタイプだったために、勉強している間そういったことに思考を乗っ取られるというような事態はない。だからもやもやしたものがその存在を主張してくるのはいつだってなにもしていないときで、そうなればやはり、その曖昧なものと向き合わないといけない、と思う。
手慰みとして談話室の隅におかれた共用のパソコンでマインスイーパをしていた荒北だったが、そんなことを考えながらぼんやりとクリックを続けているものだから今日は一度もクリアできていない。ぼぼぼぼぼっと爆弾が連鎖して爆発していき、画面に表れるYOU LOSEの文字。はあ、とため息をついてウインドウを閉じる。代わりに開いた検索エンジンに新開から送られてきた写真の広告のブランド名を打ち込んだのは、なんというか、まあ、単なる気まぐれだった。
『勉強おつかれ!この色、ビアンキに似てねえ?靖友の色だ!』
空白の件名、二行にも満たない本文、微妙に荒い画質のすこしだけピントがずれた写真。
写真のなかの広告は、シンプルなデザインの二つの指輪の写真と、ミント色のようなあの独特の色の正方形とその中央に書かれたブランド名だけで構成されている。無駄がなく、だからこそ目を引くような広告だった。手前にエスカレーターが写っているから、おおかた乗り換えの途中の駅で新開はこの写真を撮ったのだろう。歩きながらふと横を見て偶然そこにあった広告に視線が吸い寄せられ、足を止める。何事かと振り返った福富にちょっと待ってと言いながら急いでカメラを起動させ、一枚、それを添付したメールを勢いで送信してからすこし駆け足になって福富に追いつき、また歩き出す。そんな新開の姿が目に浮かんだ。
検索結果を画像一覧に切り替える。当然のことながら、画面が指輪やネックレスの銀、リボンの白、そして新開が荒北の色だと言った青の三色で埋まった。それらを眺めながら下にスクロールしていく。青、青、青。どうやら広告の二つの指輪はエンゲージリングらしい。
ふと、この色は何色というのだろう、と思った。
青とも緑とも言い切れない、その中間のような色。ミント色というのが一番近いのだろうか。けれどそれよりは青みが強いと思う。
別のタブを開き、「ミント色」と打ち込んでエンターキーを押す。チョコミントやネイルと言った項目がちらほらとまじるなかにならぶ色見本という文字にひかれて、そのうちのひとつのページを開いた。表示されたミント色は思い浮かべていたものよりも緑に寄っていて、全然違えじゃん、と小さく呟いた。
「#89c997……ってなんだこれ」
左上に書かれた英数字の羅列に首をかしげながらサイトのトップページへと飛ぶ。色見本一覧と書かれたトップページにはさまざまな色の長方形が並び、その長方形のなかに色の名前とシャープ、六文字の英数字が書かれている。どうやらこの羅列がその色を表す記号らしい、と荒北は見当をつけた。
スクロールしながらあの色を探すが、同じ色はもちろん似たような色も見当たらない。そのなかにペパーミントグリーンというものもあり、色ももちろん違うのだが、そもそもミントとペパーミントってなにが違うんだ、と思わず眉をひそめた。
ケンブリッジブルー、ナイルブルー、ターコイズブルー。スクロールしながら、だんだん「ブルー」という言葉と色の感覚がゲシュタルト崩壊していく。似ているようで違う。微妙に違う。あの色、なんて言えばいいんだろうなァなんてもう一度考えながら、タブを切り替えて画像一覧をぼんやりと見つめる。ふと、もしかしたらあのとき黒田は気づいていたのかもしれない、と思った。しかし実際どうだったかなどわからないし、黒田に聞く予定もないし、まさに真相は闇の中、というかんじである。
そんなとりとめもないことを考えていたから、近づいてきている人物が自分のよく知る人間だということに気づくのに遅れた。
「荒北、おまえ、いつの間に彼女が……!?」
そう、驚愕だとか絶望という、友人に向けるものとしてはいささか失礼なものを隠しもしない声で後ろに立った東堂が言う。荒北が振り返ると、彼は声とまったく同じ表情でパソコンの画面を凝視し、次に荒北へと視線を移した。
「ちげーよバァカ」
「違うのか? 彼女ではないのか? プレゼントではないのか!?」
「おめーはオレに彼女がいてほしいのかほしくないのかどっちなんだよ」
「いるのか!? いるんだな!? このオレを差し置いて!」
騒ぐ東堂が面倒になり、ため息をつきながらいねえよバァカと言うと、東堂はなんだつまらんと言いながら近くにあった椅子を引き、横向きに腰かけた。
「荒北にも一足早く春がきたのかと思ったのに。つまらないな」
「今は彼女より合格っていう春がきてほしいかなァ……」
「ああ、確かに、いや、なんだか悪かったな」
つい放置してきた参考書と過去問の山を思い浮かべてしまい、遠い目をする荒北が不憫になって東堂は素直に謝った。以前はどんなに言っても聞かなかったのに、最近の荒北がコンスタントな休憩をとるようになったことを東堂は不思議に思いながらも喜ばしく思っている。自分がこうだと思ったことしか他人の意見を自分の行動に反映しないタイプだと、東堂は荒北のことをそう思っているので、きっとなにか聞き入れるに至るきっかけでもあったのだろう。そんなことを考えながら、小さな箱とシルバーが並ぶ画面を再び見つめた。
「冗談はともかく、荒北がこういうものを見るとはな。予想外すぎて驚いた」
「んー、まあ、この色が気になってよ」
「色?」
わずかに首をひねるそんな仕草すらも絵になり、本当にこいつ静かにしてればちゃんと美形なのになァ、と荒北も先ほどの東堂に負けず劣らず失礼なことを思った。東堂は荒北に脳内でさんざんなことを言われているなどとは微塵も思わず、隣のタブの色見本という文字を見てああ、とうなずく。
「ティファニーブルーのことか」
「え……まんまじゃん」
まさかブランド名そのままだとは思わなかった。あまりに簡単な答えについ荒北の口がぽかんと開く。
「たしか商標登録もしてあったはずだぞ。だが、なんでまた気になどなったのだ、そんなもの気にするやつではないだろうに」
「アー、なんつーか、いろいろあったんだよ」
嘘だ、別にいろいろというほどのことなんてなかった。そう思いながらもなんとなく新開からのメールのことを話す気はしなくて、がしがしと頭をかきながら言葉を濁す。東堂はそこを掘り下げるつもりはないらしく、特に気にする様子もなしにそうかと言って色見本のタブに切り替え、ゆるゆるとマウスのあのスクロールする部分を指で転がした。そういえばあそこの名前も知らないな、と思いながら荒北はそれを見ている。見ている、というか、ただ視界においてそういった状況が展開されている、というほうがより正確といえば正確かもしれない。だいぶ味気ないが。
「キーボードを貸してくれ、荒北」
「おー」
間延びした返事とともに東堂のほうへとキーボードを押しやった。東堂はさらに新しいタブを開き、何かを打ち込んで軽快な手つきでエンターキーを押す。それを見ていて気付いたが、エンターキーというくせに書かれた文字はReturnだ。Enterじゃない。変なの、と声には出さずに呟いた。なんだかどうでもいいようなことがやけに気になるような日である。
「なにソレ」
「カラーコード」
「……なにソレェ」
「色の識別番号みたいなものだよ。さっきも見ていただろう、シャープと英数字の。あれだ」
なにがしたいのだろうと思ったが、東堂も特になにかがしたいわけではないのだろう。なんとなくの思いつきでパソコンをいじっている。ゆるゆると、あの夜みたいな、けれどすこしだけ温度の違う時間が流れている。
「でないな」
一瞬なにかを考えるように止まり、また東堂の白くて長い指先がキーボードを叩く。画面にはカラーコードのかわりに方程式の答えみたいなものがいくつも並んでいる。これも色を表すものなんだろうか、と疑問に思いながら東堂の好きなようにさせていると、荒北の疑問符を察知したらしい東堂が美術に三原色ってあるだろう、と口を開いた。
「赤青緑をまぜるってやつ?」
「そうだ。それをどれだけ混ぜるか、同じ数字を打ち込めばいつでも同じ色が表示される」
「あー、これ、レッドグリーンブルーか」
うむ、とうなずきながら東堂がまた新しいタブになにかを打ち込んだ。荒北にはよくわからないが、いま東堂はなにかを知りたくて新しいタブを開いたり数字を打ち込んだりしているらしい。
「CMYKってなに」
「……RGBの親戚みたいなものだ」
「東堂実はよくわかってねえだろ」
「オレだって聞いたことがある程度だよ! RGBとCMYKの二種類表現法があるってことくらいしか知らんよ!」
「てかそもそもなんで知ってんの? おまえパソコン好きなやつだっけ」
「あー、いや、えーっと」
言いよどむ東堂に先ほどの自分に似たものを感じて、荒北はいや別にいいんだけどォ、とあっさり引く。だが東堂は言いにくそうに、しかしどこか話したそうに、巻ちゃんが、とぽつりと言った。
「巻ちゃんってパソコン好きなやつなの? 意外だわ」
「いや、巻ちゃんが……巻ちゃんが、以前、お兄さんの仕事関係でそんなような話をしていてな……、巻ちゃんが自分のことを話すことはあまり多くなかったから、それで、気になって調べたことがあった、ただ、ただそれだけだよバカヤロウ!」
「なあオレいまなんでバカヤロウって言われたの?」
はずかしそうに、どこかやけくそにすら受け取れる態度で言いきった東堂は、また止めていた指を動かし始めた。東堂おまえ本当に巻ちゃん好きダネ、と頬杖をついてため息交じりに荒北がこぼすと、そうだよ悪いかよ! と東堂がひかえめに叫んだ。一応公共のスペースだという自覚はあるらしい。
巻ちゃん。東堂といえば巻ちゃん、というほどに、荒北には東堂と巻島がセットで刷り込まれている。そういうような人間が、他人から見たら自分にもいるのだろうか。ふと、そんなことを考えた。まあきっと福チャンなんだろうなあ、オレほんと福チャン福チャンって言ってるもんなァ、と思いながら、しかし浮かんできたのは左隣でとても幸せそうにものを食べている新開の横顔だった。
「なあ」
「なんだ」
「東堂って巻島のことすきなのォ」
「好きだぞ」
開き直ったのか、東堂は自信たっぷりに答える。荒北はその横顔に、自分が言った「すき」と東堂が答えた「好き」はたぶん違う、と思った。そうじゃなくてェ、と言うと東堂は手を止め、荒北を正面から見る。そのまっすぐな視線を受け止めながら、いま自分がしていることはもしかして恋愛相談ということになってしまうのだろうか、と、荒北は自分で自分の思考回路に驚いた。それは違う、と荒北は自分で自分の考えをはっきりと打ち消す。恋愛相談というよりも人間関係の相談というほうがまだ近い。百パーセント同じではないけれど、まだこっちのほうが実態に近い、そう思いながら、あー、と口を開く。
「たとえばだけど」
「うむ」
「巻島と手つなぎたいと思うゥ?」
「いや……別に思わないが」
「じゃあ、巻島が、手つないできたらいやだって思うか?」
「その前に絵面的にアウトだろう」
「そういうのはいまいいんだよ」
ふむ、と一言だけ置いて、東堂はすこし俯いて腕を組んだ。考えはじめた東堂に、自分の言葉の選択はそう間違っていなかったらしいとわかり荒北はほっと息を吐き出した。うまくこのもやもやを言えるか、外に出すことができるか不安だった。言葉というのはいつもどこかすこし足りない、もしくはすこし情報過多だ。ぴったり同じものをチョイスすることは難しいし、そもそもぴったり同じものが存在しないことのほうが多いのかもしれない。言葉ってのは不自由だな、と思いながら東堂の答えを待つ。
「まあ、きっと、いやではないのだろうな」
慎重に、綱渡りをするように、あるいはレース前に集中力を高めていくように、東堂はゆっくりと言葉を吐き出す。
「けど、」
「けど?」
「だからなんだ、と思う。それでなにか変わるのか? オレと巻ちゃんの関係が変わるのか? オレがなにを思うかとか巻ちゃんがなにを思ってそうしたかとか、あくまで仮定の話だからいざそうなったらどうだか知らないし、わからんが。だからなんだ、というのが、一番あっているかもしれんな」
東堂の言葉のそのピンポイントさに、荒北は感動を覚えていた。そう、なにも変わらない。たぶん、そう。そうなのだ。
「なにかの答えになったか?」
「うん、いや、解決はしてねえけど、なんかわかったかも。オレ、いまけっこう東堂見直したわ。おまえすげえよ、やっぱり」
「お、おう、素直な荒北はなんというか、気味が悪いな……ハッ、さてはなにか裏があるのだな!? オレは欺けんよ!」
「いやねーよ」
感動して損したァ、と笑いながら荒北は背もたれにからだを預け、何を言うかオレに対して! せっかく答えてやったというのに! と憤慨しながらもどこか楽しそうな東堂は頬杖をつき、今度は右手だけでリズミカルにキーボードを叩いた。
「まあ、もしなにも変わらないとしても」
「ん?」
「あったことはなくならないし、なかったらそうはならないし、同じ結論に至るとしてもルートは変わる、そういう意味ではなにも変わらないということはないのかもしれないな」
東堂の言葉のひとつひとつはたいして難しくはないのに、文章になった途端につかみどころがなくなる。わかったと思ったものはわかった気がしていただけで、本当はまだなにもわかっていないのかもしれない。これは東堂が考える東堂と巻島の話で、荒北が考える荒北と新開の話はまったく別個のものだし、そもそも新開が思っている新開と荒北の話だってまったくの未知である。誰ひとりだって内面だとか思考だとか感情だとか、そういう不定形のものを共有することはできない。同じはずがなかった。
「これが一番近いんじゃないか」
画面にあらわれた七文字と方程式の答えのような三行、そして薄い青のような、青と緑の中間の色の四角。相互変換ツール、という説明書きを見てなるほどとうなずく。ずっとなにかをしていた東堂は、あの色のカラーコードが知りたかったらしい。
「なんかもっと緑じゃねえ?」
「そうか? じゃあこっちか」
タブを切り替えながら数字を打ち直して、そうして表示された色のほうが近いような気がした。
「こっちのがぽい」
「オレはさっきのほうが近いと思うが……」
何度か数値を入れ替え、東堂が交互に二色を表示する。だんだんと違いがわからなくなってきて、焦れた東堂がまた新しいタブを開き、いま表示されていないほうの色の数値を打ち込んだ。何個も並んだタブがごちゃごちゃとしている。
「結局どっちもなんかちげえ気がすンだけど」
「奇遇だな、オレもだ」
なんだか違う、と思いながらも、この色はこれかこれ、と提示されれば二つのどちらがより近いかを考えてしまう。再び荒北の手元に戻ってきたキーボードを、人さし指、中指、薬指の三本だけを使って叩いた。一の位を変えただけでカラーコードは変わるのに見ただけではその違いはわからない。きっとこのなかに、いやきっとではなく、確実に、あの色をあらわすぴったりの七文字もある。けれどそれを見つけ出すのは砂漠でダイヤモンドを見つけるとか、海でなくした指輪を探し出すとか、思っていることをそのまま過不足もロスもなく伝えられる言葉を発するとか、そのくらいの難易度なのだろうな、と荒北は思った。
「これ、十六進法なんだな」
「ああ」
「だからアルファベットと数字が混じってんのか」
「確かに、言われてみれば。だからか」
十進法が当たり前の世界で十六進法というのはいびつだと思う。それは本当は十なのに、aだという。以前授業で久しぶりにやって、そのあとn進法のことなんて完全に忘れ去っていた新開に質問され説明しようとしたときのことを思い出した。混乱して、オレ靖友の言ってること全然わかんねえよ、と言った途方にくれたような声が耳元によみがえってくる。
オレだって新開のことがわかんねえよ、わかるようで、でもそれがあってるのかなんてわかんねえし、それを確かめることだって無理じゃねえか。
少しずつ変わっていた色の違いが目で見てわかるところまでになっていた。段階を踏んで変わっていったはずで、これは数学を使っているから本当はひとつひとつに定義があるのに、名前にしようとしたらその周辺はいっしょくたにするしかない。数学のくせに言葉と一緒じゃないか、となんだかやるせない気持ちになりながら数値をいじり続ける。
あの色に似てる色、こういう感情だとか思考に近い言葉、どんなことでも結局自分以外と共有しようとしたら近似値をとるしかないのかもしれないなと考えたが、同じものを見ていても同じと思っているとは限らない。#8ddcddのほうがあの色に近いという東堂、#81d8d0のほうがあの色っぽいという荒北。主観に振り回されて、だんだん頭が痛くなってくる。そもそもなにかを共有するという目的自体が、本当は、最初から破綻しているのだろうか。
「なあ、巻ちゃんの好きってどんな好きなの」
「巻ちゃんの結婚式のスピーチで、オレのこの切れるトークが涙で途切れそうになるようなやつだな」
東堂がすらすらと即答する。そうは言っても、きっとこいつは泣き笑いながら切れるトークを途切れさせることなく披露するのだろうな、と、彼の姿がありありと思い浮かんですこしだけ笑った。
※コメントは最大1000文字、10回まで送信できます